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幼い頃、早朝に起きてしまったことがある。
ひどい悪夢を見て、しばらく寝られそうになかった。横になっていると悪夢を思い出しそうだったので、起き上がってぼーっと時計を眺める。でもやっぱり何だか心細かった。
ふと外が気になって、カーテンをそっとめくる。
あ、と思った。
太陽が赤く輝いて、暗く冷たい夜空を温めていく。雲は柔らかな紫色に染まり、細く浮かんでいた。
何だっけ、先週国語の授業で教えてもらった気がする。
春は、あけぼの。ゆっくりゆっくり白くなっていって、山際の空が明るくなっていく。紫がかった雲が、細くたなびいて―春で一番美しいのは朝焼けだ。
不思議と心がほっこりして、穏やかな気持ちで二度寝したことを覚えている。

6/9/2023, 11:23:40 AM