暗い部屋で彼女と2人。見つめ合っている。音も聞
こえぬ深夜の2時。丑三つ時。何も言わずに見つめ
合っている。僕のことを言葉も無くただ見つめてく
る彼女の唇に、そっとキスをした。そんなことをし
ても、もう驚いてはくれないのに。僕を見つめる、
彼女の瞳は沼のように暗く、光を灯していない。僕
は先程犯してしまった罪を、もう何度目になるかは
分からないが心の中で静かにごめん、と謝罪した。
こんなことで許されるなんて思ってはいないけど、
僕の心持ちの問題だ。彼女のお腹に刺さる刃物は赤
い液体を零しながら鋭く光る。本当に出来心だった
んだ。本当に殺るつもりなんてなかった。でも結果
はコレだ。僕は、静かになった部屋の中で、彼女を
ずっと見つめながら謝罪を繰り返し、彼女を自分だ
けのモノに出来た事をほんの少しだけ喜ぶ。そんな
ことを繰り返す。あと少ししたら後を追う。せめて
もの罪滅ぼしだ。いや、逃げの道か。でもあと少し
待ってはくれないだろうか。あと少し、君の隣で。
【見つめられると】
3/28/2023, 10:19:57 AM