月凪あゆむ

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カラフル

 私にはずっと、「綺麗」が似合わないと、周りからずっと言われてきた。
 なのに。

「先輩って、なんでそんなに、隠すんですか?」
「……なにを、隠していると?」

「――本当は、先輩はとっても綺麗で可愛いひとなのに」
 初耳だった。
「眼を見ようとしないし、下ばっかり向いてるし」
 それは、よく言われる。
「でも、誰よりも仕事熱心で失敗が誰のせいでも、自分のせいにしてしまう」
 だって、私の存在が不快にさせるから、と。
「どこか、卑屈になってるっていうか」
「……つまり?」
 なんだか、誉められているのか、けなされているのか。

「――これ、プレゼントです。お誕生日おめでとうございます」

 息が止まった。だって、そんなの久しぶりに言われたから。

 手に、なにかをのせられた。
 そっと開くと、そこには綺麗な色のバレッタが。
「……なんでしょうか、これは」
「プレゼント、ですよ。先輩、意外とカラフルな色もシンプルな飾りも似合うと思って」

 私はいったい、なにを言われているのだろうか。まるで口説かれてでもいるみたいに、喜びと恥ずかしさが頬に熱をもたせる。

「私、なにか勘違いしてしまうので、やめていただきたいのですが」
「ん? 勘違いじゃないですよ。口説こうとしてます」
 また、息が止まる。

 それが、彼とのはじまりだった。
 
 今でも時々、息が止まる。
 なんだか降り回されてばかりの、そんな日々が、私を待っていたのだった。

5/2/2024, 6:08:28 AM