膝の上で、幼い息子がすーすーと寝息を立てている。
さっきまで怪獣のように大暴れしていたのが嘘のようだ。
息子の寝顔は天使の様に可愛く、いつまでも見ていられる。
けれど、この年頃の子供の遊びに付き合うのは一苦労。
もう少し、大人しく遊んでくれないだろうか
叶わぬ願いだろうけど……
本当に、寝顔は天使である
だけどいつまでもこうして眺めているわけにはいかない
たまりにたまった家事を消化しなければいけないからだ。
時間は有限なのである。
私は息子を起こさないよう、膝の上から少しずつずらす。
いくら時間が無いからといって、急いではいけない。
焦ったばかりに息子が目が覚めれば、大泣きし始めて何もできなくなる。
そうなっては時間がどうとかという話ではない。
慎重に、しかし確実にずらしていく。
完全に膝から下ろし、それでも起きる兆候がない事を確認して、ゆっくりと立ち上がる。
さあ、家事の時間だ。
鬼の居ぬ間にならぬ、怪獣の寝ている間に洗濯である。
洗濯、掃除、片づけ、晩御飯の下ごしらえ……
いつ息子が起きるか分からない不安と戦いながら、家事を一つずつこなしていく。
特に大変だったのが、息子が出したままのおもちゃの片づけ。
部屋の隅に置いてあるかと思えば、もう反対側の隅にも置いてある。
あるいは隠すように置いてあったり……
部屋を何往復もして、全てのおもちゃを片づけた。
一纏めにしてくれれば楽なのにと思うのだが、息子はどうしても部屋の隅に置きたいらしい。
息子はといえば、今日はお疲れだったようで、ぐっすりと寝ている。
いつもは物音で一度起きるのだが、今回は起きる気配すらなかった
おかげで家事が滞りなく進み、あっという間に家事が終えることが出来た。
毎回こうだったらいいのに。
時計を見れば、まだ晩御飯の支度には早い時間だった
つまり、久しぶりの自由時間ということで、私の心は浮足立つ。
が、次の瞬間この時間をどう使うかを悩んでいた。
普段こんな機会は無いので、何をすべきか何も思いつかない。
うーんうーんと悩み抜き、そして大きなあくびを一つ。
そういえば、最近寝不足なことを思い出す。
家事に息子の相手に、そして夫の晩酌に、とにかく寝る時間が無かった。
ならば何もせず寝るのもいいかもしれない。
慢性的な寝不足には付け焼刃かもしれないが、一分でも長く寝ることにしよう。
息子の目が覚めるまで。
◆
目を覚ますと、お母さんが隣で寝ていた。
気持ちよさそうにすーすーと寝息を立てている。
お母さんを起こそうと叩いたりしたけど、全く起きなかった。
どうやらお母さんは、いつもよりお疲れらしい。
ぐっすりと寝ている。
仕方が無いので、一人で遊ぶことにした。
おもちゃ箱をみると、おもちゃが全部おもちゃ箱に帰って来ていた。
いつも部屋の警備をさせているんだけど、寝ている間に戻ってくることがある。
なんでだろう。
お母さんなら知っているかな?
起きたら聞いてみよう
それまでは、警備させるためにおもちゃを置くことにしよう。
お母さんの目が覚めるまで。
8/4/2024, 1:41:51 PM