#1「お互いが大人になっただけだよ。」
一通の手紙が郵便ポストに入っていた。包みには住所も、名前も書かれていない。
こんな時代に。
とは思ったが、逆に気になる。何処の誰が手紙をわざわざ持ってきたのか。
その手紙を持って家に戻った。ごみ袋が軽く5はかる。服は脱ぎっぱなしで薬も散乱していた。
(そろそろ片付けねえとなぁ…)
ゴミを横に避けて、床に座った。一応丁寧にカッターで開けた。
「んーっと…?」
拝啓
沈丁花のつぼみが膨らみ、近づくを春を感じる嬉しい季節となりました。いかがお過ごしですか。
文章の典型文で段々と読む気が失せた。
「どうせ母さんだろ。」
ため息をつきながら取り敢えず読む。折角だ。
先日、女房から私の娘が長年お世話になったとお聞き致しました。誠に感謝申し上げます。
「ん…?」
私の娘?誰だ。
雄馬様と娘が別れたその日、娘は交通事故で亡くなりました。
病室で何度も雄馬様にありがとうと伝えたい、そう言い続けておりました。
「は…?事故…?」
別れたあの日は寒い日だった。春が近づいているのに、何でこんな寒いんだろうと彼女が言っていたのを覚えている。
思わず目を見開いた。
なので、こういった形で娘の思いを雄馬様に伝えたく、手紙を送らせてもらいました。
改めて、娘を愛していただき、感謝申し上げます。
「何でだよっ…連絡の1つもよこさねえで…!」
自然と涙が零れ落ちる。いつぶりだろうか。
あの日の別れ話。俺は彼女と喧嘩をしていた。喧嘩といっても些細なことだ。いや、彼女にとって些細なことでは無かったのかもしれない。
別れ話をした日。最後に手を繋いで彼女は言った。
「…これは、お互いが大人になっただけ。良いお嫁さんを見つけてね。」
ごめんな、俺はいつまでも子供のままだよ。
3/19/2026, 11:32:06 AM