わをん

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『繊細な花』

雪の結晶を初めて見たのは幼い頃のとても寒い日のこと。手袋の上にそっと落ちた雪の華はこれまでに見た何よりも精巧で美しい芸術品で、それが自然に存在していることに幼いながらも強い感動を覚えた。
その日からお絵かき帳やスケッチブックは雪の華だらけになり、冬が来るのを今か今かと待ちわびるこどもになった。雪がモチーフのアクセサリーを集めるうちに自分で作ればいいのかと思い立ち、細工キットや細かいナイフなどを揃えて試行錯誤を繰り返した。今ではネットショップでちょっとは知られているハンドメイドの人となったけれど、自分の作ったものがあの日に見た雪の結晶に並び立てているとはまだまだ思えない。
「冬が早く来ないかな~」
夏の蒸し暑い日をどうにか過ごしながら今日も手元から雪の華を造り出していく。胸に残る繊細な花をいつか完璧に再現できる日が来るまで。

6/26/2024, 4:23:48 AM