西の護符屋

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 チエミは一人遊びが得意だ。今日は相棒のクマのぬいぐるみ「べーちゃん」とジャングルジムで二階から目薬ごっこをしている。
 ジャングルジムの一階の真ん中にハンカチを置いてベーちゃんを座らせる。ぐんぐんと一番上まで登っていくと隣のエリアでドッヂボールをしている同い年くらいの子達が見えた。
 (仲間に入れてもらえるかな。声かけるのこわいな)
チエミは引越ししたばかりだ。他で友達になるのを待った方が良いかもしれない。いや声をかけなければ始まらないんじゃと逡巡し、ベーちゃんに目薬が当たればと願をかけた。
 ポケットから水を入れたお魚型の醤油さしを取り出す。
 無心にベーちゃんの目を狙っていると後ろから声がした。
「なにしてるの?」
 チエミより少し小さな女の子だ。今日はこの子と遊ぼうか。
チエミはニカッと笑うと女の子の横に飛び降りた。
「悪の組織に私の大切なクマのぬいぐるみが囚われちゃったの。横からは警備が厳重だから上から行けば取り返せると思うんだよね!一緒に取り返してくれる?」
 かくしてジャングルジムは悪の砦になり、魚の醤油差しは小さなレーザーガンになった。

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 声をかけてくれた子が想像力で遊べる子で良かったね、チエミ。ベーちゃんは後で洗おうね。

9/24/2024, 8:52:52 AM