大狗 福徠

Open App

往々にして私は弱い生き物であったのだけれど、
とうとうそれに気づくことはなかったの。
私は弱いくせに気丈であったから、
皆は遠くの雲を見ているようだったわ。
決して手の届かないものであろうと思ったのね。
触れてしまえば、手の内に収められただろうに誰もそれをしなかったのよ。
だから気づかなかったのね。
私は愚かでもあったのね。
雲のように、私は空に浮かんでいるわ。
死んでしまったのだから、仕方がないのよ。
あなたが手の内に収めたかった私はどこへもいないの。
あなたはどうか雲へはならないで、人を行きなさいな。

3/23/2025, 6:03:44 PM