椿灯夏

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お題《ベルの音》


霧がたちこめる最果ての駅の錆びれたベンチで沈黙する。


美しかった緑の庭園があった駅は、深淵の底にある。


どうしてこの物語を止められなかったのか。


どうして俺は。


俺は――《始まり告げる鐘》なのか。


俺はもうきっと――ここにはいられない。



まもなく扉が現れる。


駅を巡り続け、そこにある幻想を解かなければ。



彼女へと、辿り着くために。


彼女は、永遠にそれを望まないのだろうけど。


12/20/2024, 12:36:49 PM