灰田

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「自転車に乗って」

母がどこからか貰ってきた自転車。
その名も「青龍号」。(私が名付けた)
母はそれに乗って、ビューンと商店街まで飛んでって、ビューンと帰って来る。
…思えば、可愛いヤツだった。
乗ってる人間も、何か次第に可愛く思えてきていた。
乗り物にはそういうところがある。…え?順番が逆?

昔のドラマかドキュメンタリーに出て来た田舎の
お医者さんが、これもまた自転車に乗って、ビューンと患者さんのもとへ飛んで行く。
すれちがう子ども達が目を丸くする。「すげーはええー!!( ゚д゚)」…「もぉ、あんなところに!!」
診察カバンを前カゴに乗せ、先生が飛んで行く。
切実な場面の相棒としての自転車は、感動的ですらある。

だけど私は、自転車に乗れない。
欲しいとも思わなかった。
幼い頃の私にとって自転車は、小さい恐竜のようなものだった。
「あんなん、言うこと聞くわけないじゃん🙀」
って感じだった。
だから自転車に乗ってちょっとそこまでお買い物に行く人は、今もって憧れなんである。
幼児がバスや電車の運転手さんに憧れる気持ちは、私にはよくわかる(ような氣がする)のである。

「いいなーあれ。かっけえ。」と
今も、けっこうたびたび思っている。

8/14/2024, 10:53:28 AM