手ぶくろ。手袋にもいくつか種類がある。
指のあるもの、指のないもの、ミトン型のもの、革製のもの、布製のもの、ビニール製のもの、ゴム製のもの。
ただ「手ぶくろ」と書かれると、頭に浮かぶのは、たったひとつの手ぶくろだ。
毛糸のふわふわした、小さな赤いものである。赤と言っても、真紅ではなく、朱色。形はミトン型というのだろうか、親指だけ独立した形だ。そして、手ぶくろは手首に毛糸が縫い付けられていて、2つで一揃いになっている。
つまり大きさも可愛らしく、色も形も可愛らしい手ぶくろ。
この手ぶくろを思い浮かべる時、ふくふく、ふかふかとした毛玉のようなものも考える。
どうしてだろうかとしばし考えて気づいた。
「手ぶくろ」という言葉に「手ぶくろを買いに」という新美南吉のお話が結びついているようなのだ。
思い浮かべている「手ぶくろ」はこぎつねが買いに行った、あの「手ぶくろ」なのだ。
読んできた物語というものはこうして人の中に染み入る。
そして本人が知らぬ間に滲み出てくる。
物語は静かに人に影響を与える。
12/27/2022, 10:19:10 AM