「なあなあ!何見てるんだ?」
教室の後ろに貼ってある写真を見てるとKが声をかけてきた。明るい活気のある声である。
「あーこれ、この前撮った写真か!もう貼り出していたんだな~」
Kは僕の神経を逆撫でするかのように無邪気に笑った。この写真は先月の四月に撮ったクラス写真で、端っこの方に僕とKが並んで写っている。
僕とKは特別仲が良いというわけではない。去年同じクラスで何度が話しただけである。彼はいわゆるムードメーカーで僕とは住む世界が違う。なのにKはずかずかと僕に話しかけてくる。気付いていないふりする僕の身にもなって欲しいものだよ。
「…そういや、みんなこの写真見て騒いでいたよなー。俺がふざけたせいで変な雰囲気になったからみんな怒っているのかな?」
みんな無表情で真剣な表情をしているのに夏服姿のKはにっこり笑ってピースをしていた。たしかにこの写真はKのせいでとても不自然になっている。
「……なあ、何でさっきら俺のこと無視するの?というかお前、大丈夫か?すごい震えているけど…。」
震えが収まらない僕にKは心配そうに僕の顔を覗き込む。
震えたくなるよ。だって今すぐ君から逃げたいのだから。怖いんだよ…!だって君は……
去年の夏、事故で亡くなったんじゃないか!
題名 夏服のK
『解説』
Kは去年の夏に亡くなった。ということは、語り手の前に現れたKは幽霊であり、語り手と同じクラスの学生でない、ということになる。
そりゃあ騒ぎにもなるはすだ。新しいクラスの皆と初めて撮った写真が、死んだはずの人間が写った心霊写真になったのだから。
Kは自分がふざけてしまったせいで写真が変なことになったと言っていたが、写真に写った皆は冬服の格好なのに、自分だけ夏服であるということに違和感を覚えなかったのだろうか?
5/28/2024, 1:23:45 PM