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 くたくたになった体を引きずって浴槽に身を沈める。緊張が一気に和らいで浸かった瞬間に声が漏れた。
「はぁぁ…」
 お疲れ、俺。肩を軽く揉んでやる。今日の仕事も無事やり遂げた。食事は済ませてあるから後は髪と体を洗って、髪を乾かしながら明日の資料に軽く目を通しておかないと…。
「ふ、ぁ~」
 湯船が揺れて体が芯から温まり眠くなってくる。疲れも手伝っていて余計にまどろみから抜け出せない。
 やばいな…。このまま寝てしまっても言い気がする。うとうとしかけてそういえば明日、仕事が終わったら…終わったら…

「!」
 勢いよく立ち上がり、湯船がざぷんと大きく波打った。そうだった、明日は仕事終わりにデートの約束をしていたんだ!お互い忙しく細かい打ち合わせをなぁなぁにしていたため明日は目前。君のことだ、忙しい俺に遠慮して何も聞いてこなかったんだろう。こんな時、君が取る連絡方法は一つ。

 バスタオルを巻いてドアの郵便受けを開けると俺達に馴染み深い手紙が入っていた。嫌じゃなければ、と前置きがされて待ち合わせ場所と「お仕事お疲れ様。新しい服を買いました。明日着ていくのが楽しみです」と書いてあった。君って俺を元気にさせるのが上手だよね。
 再びお風呂に戻り、髪と体を洗って排水口へ流れる泡を見送った。日々の疲れはその日のうちにとっておかないと、君とのデートに疲れた顔は見せられない。

 今日の疲れと『今日にさよなら』。
 もし疲れがとりきれない時は君に癒して貰おうかな。


2/19/2023, 8:56:04 AM