海月 時

Open App

「ごめん。」
彼の最後の言葉が頭から離れない。

「もう別れよう。」
突然彼から言われた言葉。頭の整理が追いつかない中、口は勝手に動いた。
「何で、どうして?私何かしちゃった?」
彼は横に首を振った。
「君は悪くない。僕が悪いんだ。」
それだけ言って、彼は立ち去った。暫くの間、私はその場から動けなかった。

彼の事が忘れられなかった。頭の整理がついても、彼の居ない日には慣れない。全てが退屈だった。何をしても彼を思い出す。そんな日々が何ヶ月も続いた。そしてある時、一通の手紙が届いた。それは、彼の母親から送られてきた。書かれている内容を見て、私はすぐに走りだした。

私は今、彼の墓の前にいる。どうやら私の想い人は、もうこの世に居ないらしい。死因は病死。私を振った時には、もう余命が決まっていたのだ。そんな彼は、私宛の遺書を母親に託し死んだ。
〈幸せにできなくて、ごめん。〉
これだけが書かれた遺書。私は涙を堪えて、彼の墓に向かって言った。
「君は馬鹿だよ。私は十分幸せだった。君のお陰でね。だからさ。君の苦しみを私にも背負わせて欲しかったな。こんなお別れなんて、嫌だよ。」
堪えていた涙が溢れてくる。それと同時に、今までの思い出が脳内に流れた。あぁ、もっと一緒にいたかったよ。

失恋って、恋を失うだけじゃなくて、心も失うんだ。あの時、失恋した私。それでも願ってる。彼との恋を奪い返せる時を。



6/3/2024, 3:28:26 PM