「君は過去と未来どっちに行きたい?」
「別に、どっちも興味ない。」
「えぇ〜、夢がないなぁ君は。大人の自分に会いたいとか、あの日をやり直したい! とかないの?」
「ないね。」
つまんな〜い、なんて声が隣から聞こえてくる。
それが本心なんだから仕方ない。タイムマシーンなんて、あったところでどうしろというのか。
「私はねぇ、未来がいいなぁ。」
「……未来? 行ってどうするのさ。いまからその未来がもう来ないようにしようってのに。」
「だからだよ。……未来に行って、お母さんに謝るの。親不孝な娘でごめんなさいって。」
「…………。」
心地よい風が吹く。放課後の学校の屋上から見える景色は、夕日で赤く染まってそれなりにきれいだ。
フェンスを背に、ふたり手を繋いで屋上の縁に立つ。
私達は今から、ここから飛び降りる。
「怖気付いた? 止めてもいいんだよ。私一人でいくから。」
「ううん。ただ、ちょっと罪悪感あるなってだけ。おいてかないでね。私だって、もうこれ以上先には生きていけないもん。」
「……覚悟は、良い?」
「うん、いいよ。」
過去も未来も、私達にはもう必要ない。
顔を見合わせ、フェンスから手を離し目を閉じゆっくりとしあわせへの一歩を踏み出した。
#1『もしもタイムマシーンがあったなら』
7/23/2024, 6:05:51 AM