血腥い匂いが当たりに広がる。
彼らはまいにちのように鉄パイプ金属バットなど
あらゆるものを武器にして
相手を殴り倒していた。
10代20代の大人にも関わらず
そこには彼らを止めるヤツなど誰一人もいなかった。
でもあの日は違った。
相手のトップをやったあとに気づいた。
俺たちを見上げる小さな子供がいた。
まだ善悪の見分けを知らないのか
俺たちを純粋な目をしてこっちを見ている。
善悪の見分けというよりも
これを悪として見ていなかったら
コイツはイカれているけれど
そのくらいこの状況はおかしかった。
「お兄ちゃんたち大丈夫?」
「なんでいるんだ。
ここは子供が来る場所じゃない。」
少し威圧感のある声で言ったが
コイツは何も感じていないようだった。
「ママとパパは迷子だよ。」
一瞬何言ってるか分からなかった。
「...お前迷子なのか。」
「違うよ。ママとパパが迷子なの。」
おかしな子供だと思った。
警察署までは少し遠い。
しかし俺たちのこの格好では面倒なことになるため
近くまで連れていくことにした。
コイツは俺たちに
なんの恐怖も感じていないのだろうか。
「お前はこんなやつになるなよ。」
そう言って子供の背中を押した。
「ここ真っ直ぐ行けば警察署だから
迷子だって言えよ。」
アイツは最後まで笑顔だった。
俺達そろそろやめ時かもな。
そう言いながらアイツと反対方向に歩いていった。
─────『善悪』
4/26/2024, 11:47:30 PM