『正直』
君は、‘嘘’を吐いたことがあるだろうか。
「貴方は元気? 私は元気!」
……元気じゃないよ、別に。
「貴方が笑顔になるなら、私も嬉しいなっ!」
……別に、君が泣いても私はどうでもいいけどね。
今日も、ずっと。
私は、嘘を吐く。
だってそれが当たり前だから。
そうじゃないと、それは私じゃないでしょう?
元気じゃない私は、
優しくない私は、
……私、じゃない。
「あれ貴方、見たことないんだけど、転校生? ……なら、私が案内してあげるっ!」
今日も元気に、嘘をつけ。
私は私だから。
そんな、時だった。
「オマエ、きっしょ」
……え。
案内すると言った私の目を10秒見つめて、そういった君。
……う、そは……バレてない、よね?
ダメだよ、私って優等生でいないとなんだから。
嘘吐きだってバレたら、今までの苦労が水の泡。
「……聞こえなかったの? 無理して笑ってんの気持ち悪ぃつってんの」
君は、正直だ。
グサッと、何かが刺さったような気がする。
……ダメだ、自分の感情は放ってないと。
また、お母さんにすぐに癇癪起こすのは子供だって、そう言われたから。
癇癪起こさないよう、嘘を吐き続けなきゃいけない。
「オマエもうちょっと素直になれば? 気色悪ぃよそれ」
素直、す、なお……。
『素直』って、なんだっけ。
「オレが、嘘吐きを素直吐きにしてやるよ」
素直吐きってなんだよ、ばっかじゃないの、と笑った。
そしたら、
「その調子」
と君はニコニコ言うんだ。
私は、
__素直になるのかな?
6/2/2023, 12:41:50 PM