白糸馨月

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お題『逆さま』

 小説を書くネタが思い浮かばない。とりあえず逆立ちでもすれば浮かぶだろうか。さかさになることで頭に血液が行ってひらめくだろうか。
 僕はさっそく壁に向かって立ち、床に手をつき、足をあげた。
 だが、そこから足を伸ばすことができない。上げた両足はすぐにドンと床を鳴らす。
 ならばもう一度、とさかだちにチャレンジする。勇気をだして足を上にあげた瞬間に勢いで足を伸ばすんだ。
 と思って、伸ばしたら今度は伸ばした足のまま床を打った。
 痛い、すごく痛い。
 そこで僕はようやく思い出す。
 学生時代の僕の体育の成績は「1」とか「2」だったことを。足はクラスで一番遅く、縄跳びも「●●跳び」と銘打つものは出来ず、あぁ、そういえば跳び箱の上で前転することなんて怖くて出来なかったっけ。
 なんでこんな僕が血迷って逆立ちをしているんだろう。
 痛む両足をさすりながら「アイテテテ」と立ち上がって、デスクに戻るとスマホを片手に大人しくお題から連想ゲームを始めた。

12/7/2024, 3:37:30 AM