帰り道、彼の影が伸びていた。その影がまた伸びて、膨らんで、蠢いて、まったく違う形をなすものだから、私は怯えてしまった。後ろに、こちらを向いて立っているはずの彼の顔を見れそうにない。どうしよう、これでは帰れない。
「どうしたの」
いつもと同じ声だった。とくに感情を含めていない声に、安心と恐怖が入り混じる。私はどうすればいいんだろうか。知らんぷりして帰る?できるのか。逃げる?逃げきけることができるだろうか。
私は影から目を離して電柱を見て、振り返った。いつもの彼が立っていた。笑って、なんでもない、と返した。彼はまたいつも通りにそう、と歩を進めていった。
体の力を抜いて、後をついていった。
4/19/2025, 1:08:46 PM