拝啓
春の名残を帯びた風が、やわらかくもどこか頼りなく頬を撫でてゆく頃となりました。
貴方はいかがお過ごしでございましょうか。
本日、ひとり展望台にて沈みゆく夕日を眺めておりました。茜に染まる空はあまりにも優しく、それでいて胸が締めつけられるほどに切ないものでございました。
その美しさに触れた瞬間、ただひとり、貴方のお姿だけが心いっぱいに溢れてまいりました。
どうしてなのでしょう。あの夕日が沈むたびに一日が終わってしまうことが寂しくてたまらぬように、貴方のことを想えば想うほど、こうして離れていることが、耐えがたいほど恋しく感じられてしまうのでございます。
ほんのひとときでよいのです。貴方の隣に寄り添い、その温もりを分けていただけるなら、それだけで、この胸の寂しさなど、すべてほどけてしまうというのに。
けれど叶わぬ今は、ただこうして、触れることもできぬ距離の中で、貴方を想い続けるよりほかございません。
それでも不思議なことに、苦しいばかりではないのです。貴方を想うこの胸の痛みさえ、どこか甘やかで、愛おしくて、まるで夕焼けの残り香のように、けれど確かに私を満たしてくれるのでございます。
お願いごとを一つだけ。
貴方が夕焼けをご覧になる折には、ほんの少しだけで構いません、私のことを思い出していただけませんでしょうか。その一瞬があるだけで、私はどこまでも幸せになれてしまうのです。
夜が訪れ、静けさに包まれるその時、もしもふと寂しさを覚えられましたなら、どうか思い出してくださいませ。
遠く離れたこの場所で、同じように貴方を恋しく想い、名を胸の内でそっと呼び続けている者がいることを。
いっそ、この身が風となり、貴方のもとへそっと寄り添えたならば、その頬に触れ、やさしく名を囁くことが叶うのでしょうに。
次にお会いできるその日には、どうか、今よりも少しだけ長く、私をお傍に置いてくださいませ。それだけを願いながら、今宵もまた、貴方に想いを重ねております。
敬具
4/7/2026, 1:49:57 PM