死にたい少年と、その相棒

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  /何気ないふり

腐れ縁。そんな言葉が聞こえてきそうな関係の、殺したいほど嫌いなアイツ。
よく回る頭を持っただけの、憐れなヤツ。

悲しいとも辛いとも言えず、泣く事も誰かを頼ることも出来ず、毎日のように死にたいと言って自殺を繰り返す。
そのくせ、未だに一度も自殺は成功していない。
可哀想なヤツ。

そんなアイツの姿を見ただけで、知りたくもないアイツの状態が俺には分かる。分かってしまう。

例えば、何時もよりほんの少し歩く重心が傾いていたら、首吊りか飛び降りに失敗して足を痛めた時。
何時もより腕を組む回数が多いと大抵、薬の過剰摂取をして震える手を隠している時。
ずぶ濡れなら——聞かなくても分かる。入水の後。

今は、何時もより少し背中が曲がり猫背気味。よく見れば黒いコートの中に突っ込んだ手をなかなか出そうとしない。
いつも悪い顔色も、一段と青白い。

「おい」
「……なに」
アイツの左腕を掴む。露骨に強ばった肩の力は一瞬で抜けて、面倒そうな顔を向けられた。
コイツは、いつもこうして何かあっても何気ないふりを決め込む。
力任せにポケットから引き抜いた手首からは、適当な手当では間に合わなかった血がだらだらと絶え間なく流れている。
「手前、これするのに何使った」
「キミのナイフ」
あっけらかんと答えられる。
これだからコイツは嫌いだ。力いっぱいに傷の上に力を加えてやると「痛い!痛い!」と喚き始めたのを無視して掴んだ手首を引き摺ってやる。
「そのまま失血死できると思うんじゃねぇぞ。死なねぇよう手当てしてやるから喜べ」
「ちょっと!余計な事しないでよ!この馬鹿!離せチビゴリラ!」
腹が立ったから、掴む指先にこれでもかと力を加えながら、ずるずると踏ん張る軽い体を引き摺ってやった。

3/30/2023, 11:22:34 AM