るに

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哀か、楽か。
恋か、愛か、それともまた
別の何かか。
考えたくない、考えないでいたい。
この世には意味のわからない感情が
山ほどある。
私は感情に支配されたくない。
できるだけ関わりたくない。
でも勝手についてくるのが
感情ってもので。
もう日も沈んでるのに
家に帰りたくなくて
見慣れない路地に足を踏み入れた。
思ったより暗くて
迷路みたいな道で
ちょっとだけ怖かったけど
すぐに出来てまだ間もなそうな
「雨傘」と書かれたお店を見つけた。
雨が降りそうな黒い雲が
こちらに来ていたので
傘を買っていくことに。
店員さんは1人しかいないみたいで
会釈をしてからは
一言も口を開かなかった。
独特な雰囲気のある店員さんに
話しかけるのは勇気がいるけど
どの傘も面白いものばかりだったので
おすすめを聞いてみた。
すると真っ黒な傘を渡された。
あなたにピッタリの傘です、と。
他にも赤やオレンジ、黄色などの
カラフルな傘があったのにと、
私は少し不思議に思いながらも
黒い傘を買おうとした。
けど、
代金は要りません。
お気持ちだけ頂きますね。
と言われた。
ドアを開けてお店から出ようとした時、
月明かりに照らして
よく傘を見て見てくださいね。
とも言われた。
外は大雨で
傘があってよかったと思った。
しかし傘をさすと
傘からパラパラと雨が降ってきた。
傘の内側から。
すごく優しい雨が。
その雨に打たれる度に
自分が水になったみたいに
同心円状に広がっていって
すごく心地がよかった。
"Good Midnight!"
気がつくと外の雨は止んでいて
月が雲から出ていた。
傘は月の明かりで透けて
暗い藍色になった。
薄い藍色が散りばめられていて
まるで星のようで
関わりたくなかった感情が
また1つ生まれてしまったような気がした。
綺麗だ、と。

6/4/2025, 3:26:57 PM