『最後の、声』
私が最期に聞いたのは、喜びの声、家族の叫び声と
この世のものとは思えない怪物の声だった。
―私の村には1年に一度、この村に住んでいる怪物に生贄を捧げる。
怪物が暴れて、村が壊されないように…
そして今年の生贄に私が選ばれた。
村の者は安堵の声をあげた、親だけは、
『この子を生贄になんてさせたくない!』
『なんでこの子が!』
と声を荒げていた。
私は、何も感じなかった。ただ親よりも先に逝ってしまうのは嫌だった。でも生贄に選ばれたからには行かないといけない。
―怪物がいると言われている洞窟に来た。
親は前日に、一緒に逃げようと言ってくれたが、
私は断った。
私一人の犠牲で何千人の人が生きれると思ったら、
悪い気はしなかった。
『さぁ、行くんだ。』
そう言われ、私は一歩一歩進んだ…
みんなの姿が見えなくなってすぐに、
前が真っ暗になった。
あぁ、私死ぬんだな、そう思った。
意識がなくなる前に聞いた声は、両親の叫び声と泣き声
村の人達の安堵の声。
怪物が唸っているこの世のものとは思えない声。
私が最期に聞いた声は、この4つだった。
『お母さん、お父さん、先に逝ってるね』
震える声で私は一人呟いた。
6/26/2025, 12:23:03 PM