昔から続く伝統的なお家柄だった。だからなのか日本の行事の時はいつも着物だったしハイカラな物なんて一切触れさせてもらえなかった。ギターやピアノを弾きたいといったら三味線やお琴の講師がやってくる。テレビを見たいと言ったら歌舞伎や能を見に行く。そんな家庭だった。小学校から中学校にかけては反抗期も相まって親にかなり反発したが、高校に入ると反発することは殆ど無くなった。まるで親の操り人形の様に生きていたある日突然好きな人ができた。初恋だった。今までは異性のことなど気にしたことなどなかったのに。次第に親に内緒でアプローチをかけていくうちに両想いになった。親にも報告した。祝福されると思っていた。流石に伴侶までも口を出してこないだろう。そう親のことを誤解していた。元々彼らにとって僕の存在など歯牙にもかけていなかった。ただ機械的に次期当主として僕を育ててだけなのだ。結果から言うと僕の望みは却下された。それでも足掻いた。反発した。けど無意味だった。結局のところ実の親に勝てるわけがないのだ。その恋人は自殺した。自分も自殺しようと思った。でもできなかった。僕には彼女と自殺する権利は無い。彼女を僕は幸せにするどころか地獄に落としてしまった。親はそのことを軽く受け止めただただ僕が伴侶が欲しいと勘違いして見合いの相談をしきりに話す様になった。それを僕は拒否し続けてある冬の雪が降る頃両親ともども死んだ。どんな確率か同じ日に老衰で死んだ。親が死んで当主となった僕は近くの湖を眺めながら自らの半生を振り返っていた。今思えば虚無だった。好きな物も特技も何もかも無かった。ただの出来の悪い機械の様だった。誰か教えて欲しい。僕という我は何処なんだ?
この物語はフィクションです。
お題My Heart
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3/27/2024, 1:37:50 PM