香草

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「逆さま」


栗色の髪をいつものようにくるんとさせて、ピンク色のリップを塗る。ほんのりチークを乗せてカラコンをつける。
そしてミサンガをつける。

高校に入学してから仲良くなったグループ。
青春らしい青春が始まったと思った。
グループの中心メンバーが言い出したのが始まりだった。

「うちらだけでミサンガつけようよ!」
「毎日つけてこようね!おそろいね!」

それ以来、ただでさえ息苦しい学校という世界の中で首輪を付けられたようだった。
一度ルールが決まった組織は仲間はずれを許さない。
ミサンガは左手につける。
班を決める時は必ず同じグループ同士で集まる。
カラオケで歌う順番…

明言されない、暗黙のルール。お互いの理解を前提とした超えてはいけない曖昧なライン。
それを守ってさえいれば弁当をみんなで囲んで食べたり、放課後買い食いしたり、理想的な青春が送れるのだ。
ただ、ふと思い出すのが中学の穏やかな時間。
ルールなんて何一つなかった自分の好きな人、好きなこと、好きなものだけで生きていた時代。

今じゃ自分の好きなものが分からない。
こんな面倒くさいルールから抜け出したいという思いがちらつく。

鏡の中の女子高生と目が合う。
頭に声が響く。

ミサンガ逆じゃない?

12/7/2024, 10:37:04 AM