谷折ジュゴン

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創作怪談 「優しくしないで」

こっくりさん、こっくりさんあの人の気持ちが知りたいです。

「わぁ、また難しい質問がきたよ」

手軽な降霊術で知られる「こっくりさん」をとある学校の生徒たち三人が行っていた。そこに、新米きつねは遣わされたのだった。

「これ、人間が十円玉から指を離したり、儀式を中断したら問答無用で祟んなきゃなんないでしょ。自分嫌だよそんなの」

人間好きな新米きつねにとって、荷が重い使命。だけど、逃げるわけにもいかない。長々と迷った末に心を決めた。

専用の五十音表の上で新米きつねは十円玉を念力をつかって動かす。「や」、「さ」、「し」、「く」、「し」、「な」、「い」、「で」

「優しくしないで。ふう、こんなもんかな」

三人はどよめく。そして、質問は続く。優しくしないでとはどういうことですか。テストで満点とれますか。学校で一番モテるのは誰ですか。

新米きつねはひとつひとつ丁寧に解答していく。
だが、三人は飽きたらしく「こっくりさん」を中断して帰ってしまった。新米きつねは社に帰れず、ポツリと教室に取り残される。

「は?散々質問しといて、おいてけぼりなんて。自分、全部答えたよね。ねぇ、ねぇってば」

新米きつねは悲しいやら悔しいやら。だんだんと腹が立ってきた。体の奥からどす黒い感情が湧いて来る。なぜ人を祟らないといけないのかこの時、新米きつねは理解した。とたんに 体が大きく、毛並みは荒く、爪も牙も鋭く硬くなる。

「祟ッテヤル」

新米きつねは教室の窓を破り、三人の元へ駆けて行った。

前編 (終)

5/3/2024, 1:57:16 AM