きづめ

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同じ市内のアパートに引っ越すことになった。断捨離をしていると、古い日記帳を見つけた。表紙に名前はなく、中を開いてみると、約5年前、小学生高学年の時に私自身が書いたもののようだ。何気なくめくってみると、私は唖然とした。殴り書きで、消しゴムを使わずに汚く書いてある日もあった。そして、殆どがネガティブな内容だった。

"委員会でミスしておこられた。私ってほんとにしっかりしてないね。××ちゃんもあきれてた。私はきっとこれからもぜんぶ上手くいかない。もうやだ。"
"じょうだんのつもりなのに〇〇をおこらせた。きっと私は調子のりすぎてるんだ。しゃべるの下手ならしゃべらなきゃいいのに。"

やめて。と思った。日記帳を持つ手がゴミ袋のガラクタたちを掻き分ける。そして日記帳を奥へ押し込めようとする。私は今、高校生でそれなりに上手くやっていると思う。もうこんなネガティブな記憶なんて捨てたはずだ。だから、これはもうゴミだ。でも、今の私はこの日記帳の延長線上にある。現に、今の私もミスに対し自分を貶して酷く落ち込む。それに誰かの日記帳に私の過去が描かれているかもしれない。自分の中では捨てた記憶も、誰かの中には焼き付けられ忘れられることがないかもしれない。諦めよう、結局今の私は、過去の私や誰かの日記帳から逃れられないのだ。私は日記帳をゴミ袋から拾い上げ、空の引き出しに入れて鍵をかけた。誤って見ることがないように。でも、受け入れられる時が来るかもしれないから。

8/26/2024, 11:19:42 PM