2人きりの研究室で、先生は情熱的に言いつのった。
「フタバくん!ボクは、君のことを、これまでずっと待っていた!この運命の瞬間を!」
まるで告白のような台詞だが、勘違いしてはいけない。フタバくんは私ではないし、ましてや人間ではない。
フタバくんは地中の古代遺跡の壺から発掘された植物の種だ。
でも、先生の輝く瞳は、その成果よりも私にとってはロマンティックだったから、そっとその横顔を撮ってから、双葉くんをカメラに収めた。
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フィクション。ギリギリになってしまいました。作中では使えませんでしたが、ロマンという外国語(英語かと思ったらフランス語で、しかもローマ時代の口語で書かれた庶民の小説という意味。あったなロマン主義。すっかり忘れた世界史)発祥の言葉に、浪漫という漢字が当てられているのが、好きです。
古代種子は、氷河から3万年2千年前のナデシコの種子が発芽していたり、イスラエルの洞窟から2千年前のナツメヤシが発芽していたり、日本では2千年前頃の地層のハスが発芽していたりするらしいです。んー!浪漫!
7/13/2024, 9:17:15 AM