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「喪失感」

 剣を取り落とした。足の力が抜けて崩れ落ちるように膝をつくと、鎧の音がガシャリと鳴る。前にも後ろにも倒れることのできぬまま、俺は呆然とその首輪を視界に入れていた。
 信じられなかった。―――あいつが、死んでいたなんて。
 本来、決して外すことのできない首輪だ。魔法文明時代の名残だという。文明をまたぐ長きを生きたあいつが、まさかこんな所で。
「さて、どうするかね?」
 大魔導士は俺の反応を愉しんでいる。俺はあまりのショックに怒りすら湧かなかった。戦う気力も忘れ果てた。
 ―――檄を飛ばす仲間の声が届くまで。

(所要時間:10分)

9/10/2023, 10:24:20 AM