母は、イラついたように
広げられたテストの端を指で弾き
深いため息をつく。
点数は悪くなかった。
ただ、満点ではなかった。
『ごめんなさい』
「謝罪は要らないの、結果にして頂戴!」
上司は、イラついたように
私に任せっきりだった資料を丸め
ゴミ箱に投げ込んだ。
資料は、完璧だった。
が、完璧が故に気に食わないようだった。
『すみませんでした』
「気が利かないんだよなぁ、入社何年目よ。
そういうのは、言わなくても察するもんだよ?」
ことば、言葉、要らないもの。
結果を出せば、気が利かないと言う。
何も言わなければ、ヒソヒソと
誰かが囁いている。
だけど、私は…
神様、次に生まれてくるときは
どうかどうか…言葉の要らないモノに
変えてください。
言葉を交わさずに、愛されるような
そんな世界があるのならば。
『人間』である、必要はきっとないから。
【お題:言葉は要らない、ただ⋯】
8/29/2023, 4:33:17 PM