NoName14

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母は、イラついたように
広げられたテストの端を指で弾き
深いため息をつく。

点数は悪くなかった。
ただ、満点ではなかった。

『ごめんなさい』

「謝罪は要らないの、結果にして頂戴!」

上司は、イラついたように
私に任せっきりだった資料を丸め
ゴミ箱に投げ込んだ。

資料は、完璧だった。
が、完璧が故に気に食わないようだった。

『すみませんでした』


「気が利かないんだよなぁ、入社何年目よ。
そういうのは、言わなくても察するもんだよ?」


ことば、言葉、要らないもの。
結果を出せば、気が利かないと言う。
何も言わなければ、ヒソヒソと
誰かが囁いている。

だけど、私は…

神様、次に生まれてくるときは
どうかどうか…言葉の要らないモノに
変えてください。
言葉を交わさずに、愛されるような
そんな世界があるのならば。

『人間』である、必要はきっとないから。



【お題:言葉は要らない、ただ⋯】

8/29/2023, 4:33:17 PM