#18 どうして
(#16 #17の続き)
俺があの動画を投稿した次の朝、律は俺の家に来なかった。
あぁ、もう手遅れだったんだ。
昨日来てくれた時、ほっとけよなんて思ったくせに。
あの曲が律に届いてたら、なんて期待して、馬鹿だった。
どうして、昨日ドアを開けなかったんだろう。
どうして、本音を言えなかったんだろう。
律、どうして、来てくれなかったの。
答えのない、自分勝手な疑問が頭に浮かんでは消えていく。
どうしようもなくなって、昨日あげた動画を開いてみた。
急上昇ランキング一位。
その文字を見ても、心は踊らない。
律に届かなきゃ意味がないんだ。
そう思うと同時に概要欄を開いていた。
一番大切な、親友へ。
#の一番下。
曲を聴きに来ただけじゃ見つけられない場所。
これは律に対しての曲だ。
そう伝えるために、書き加えた。
唇に、湿った感覚がする。
しょっぱくて、苦い。
ずっと、泣きたかったんだ。
心の中で冷めた言い訳をして、誤魔化してた。
律の優しさも裏切って。
もう、涙は止められなかった。
拭うこともせずに、部屋で泣き尽くす。
泣いて、泣いて、泣いて、泣き疲れて眠ってしまった。
異常に喉が渇いて目を覚ます。
辺りはもう明るくなっていた。
俺、昨日飯も食べずに寝たのか。
そう思いながら布団からもぞもぞと這い出る。
起き上がった途端、頭にアンプが乗っているみたいに重かった。
あんなに泣くんじゃなかったな。
泣いたって、何も変わらないのに。
そう後悔しながら、コップに水を注ぐ。
カチ、カチ、と部屋に秒針のリズムが響き渡って、居心地が悪い。
時計を見てみると、針が指していたのは、九時。
今日も、来なかった。
そう思うともっと居心地が悪くなってくる。
外の空気でも吸おうとドアを開けた。
そして、
目の前に広がった光景に息を呑む。
「どうして」
その言葉が、冬の冷たい空気の上にふわり、と舞った。
1/14/2026, 11:27:30 AM