『いまひま?』
ピコーンと着信音がした。画面を覗くとそう書いてあった。
『ひまといえば暇』
すぐに既読がつく。
『電話しよーぜ』
『おけ』
プルルルル、プルルルル
「もしもしー、やっほー」
「やっほー」
電話をかけるのは何度目だろうか。と言っても両手で数えられるくらいだろうが。
この電話の相手は、私の好きな人である。たぶん。
ただ、確信が持てない、私は本当にこの人が好きなのか、そうでないのか。一日一度は彼のことを思い出す。朝も夜も、彼と話している時のことを想像して、彼が私を好きでいてくれればいいと願う。
これは、好きと言う感情なのだろうか。
私は親に家族に愛されてないから、愛がわからないわけではない。なんなら、他の人よりも深い愛をささげてくれている方だと思う。
自慢ではないが、今まで告白されたことはあった。
仲良くしている男子が照れながらも頑張って言葉に出してくれた。
仲良くしてる分、私もそれなりの好意が彼らにあった。そのどれもが、私の恋愛的な愛ならば、私の愛は軽い、と言うことになるのではないだろうか。
そんなわけないと、ただ、日常的に仲良くしているからその好感があっただけ。そうだと信じた。
でも、一般的にはこれを「好き」というのだ。だからたぶん、好き状態。
「ねぇ、好きなやついるの?」
「……どうだろうねー、いないんじゃない?」
「え、なにその間。あやしいー!だれだれ?」
「いや、いないってー、好きとか分かんないもん」
何度これで濁してきたか、何度これで自分の心を騙してきたか。
この人が他の女の子と話しているのを見ると寂しい。
私と話した内容を覚えてくれてないのも悲しい。
私との思い出だけにしてほしい。
いつ、この想いを打ち明けるべきか。
打ち明けないべきか。
いまは、彼は私に話しかけてくれる。多少の好意があるのだろう。それがいつ無くなるか分からない。後悔したくないけど、素直になることもできない。一体この世の人たちはどうやって恋をして来たのか。
失敗するのがこわい。友達としても仲良くしてくれなくなるかもしれない。
彼は、何度も私の好きな人を聞いてきた。
突然、「おれ、彼女ほしいんだよね」と言われたこともあった。
「ドキドキしたことあるの?」って聞かれて、頭をポンポンされたこともあった。
毎朝学校に行くと、私の席に座って待ってた。
ねぇ、私のこと好きなの?
そう聞きたかった、でも聞けなかった。関係が崩れるのが怖いから。今もこうやって電話している時も、ボロが出ないように発する言葉に慎重になってバレないようにしている。間違えて「好き」と言ってしまえば楽なのに性格故にそんなことはない。そんなこんなでもう二年が経とうとしている。
今日は七夕
織姫さんと彦星さんは会えたかな。
満点の星空の下で私は願う。
どうか、私に勇気をください
そしてどうか、見守っていてください
7/5/2023, 1:35:19 PM