小絲さなこ

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「もっと早くに気付いていたら」


「告白……しようかと思って」
彼女はそう言ってマフラーの先を弄んだ。

「そっか……」
ため息のような相槌が白い。
ついにこの日が来てしまった。

「うまくいくことを祈ってるよ」
口ではそう言うけど、半分くらいしか祈ってない。
いや、ちっとも祈っていない。




「ねぇ見て」

空を見上げると、茜色と紺色のグラデーション。

「綺麗だな」

彼女の横顔を盗み見る。
もしかしたら、ふたりで下校するのはこれで最後になってしまうかもそれない。



好きならば、彼女の幸せを祈るべきだ。


うまくいかなければいい。
そうすれば、これからもずっと──


ふたつの思考に挟まれる。
もっと早く自分の気持ちに気付いていたら、こんなことにはならなかったかもしれない。


彼女の頭に手を乗せる。
こんなことをするのは、これで最後かもしれない。

「うまくいくといいな」

照れくさそうに「ありがとう」と言う笑顔に、鼻の奥が痛くなった。



────光と闇の狭間で

12/3/2024, 7:36:47 AM