セーター
律はブルーがよく似合うと思う。
なかでも似合うのは鮮やかなくすみのない青色だ。
じゃあ律が雲一つない真夏の青空のようなすっきりした人間かといえば、全く違う。
過ぎたことをくよくよとひきずるちょっと面倒な性格だ。
今も、さっきの店員への態度はそっけなかったのではないか、次にお店にいったらあのそっけない客が来たと思われるのではないか、と悩んでいるところだ。
私からみれば十分フレンドリーな客だったと思うのだけれど、言ったところで聞きやしない。気が弱いけれど頑固なのだ。
次に行くときはこれ着ていきなよ、と紙袋を押しつける。
ラッピングもなにもないただの茶色い袋だ。
律は受け取ると不思議そうな顔で袋を開ける。なかから鮮やかなブルーのセーターが現れた。
律はセーターを体に当ててみる。うん、やっぱり似合う。
派手すぎないか、と律は言う。
言うと思った。だがこればかりは譲れない。誰がなんといおうと律はこの色が似合うのだ。
派手じゃないしとても似合っている。そのセーターを着た律を見れば店員も大歓迎してくれる、と熱弁を振るう。
君がそういうならそうかもしれないな。
私の勢いにけおされて律は言った。
よし、じゃあこれを着て行こう。
律は着替えはじめた。
11/24/2023, 11:29:22 AM