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「心の健康」

ため息が出るほど美しい。舞台写真ばかりのアルバムをめくるたび「ほう」とか「はあ」とか漏れてしまうのは許してほしい。

お嬢吉三の大川端での「こいつぁ春から縁起がいいいいわえ」の場面、櫓の上で太鼓を打ち鳴らす場面。

菅原伝授手習鑑の寺子屋、松王丸が菅秀才(実は我が子)の首を検める場面。我が子の最期の様子を聞いて泣き崩れる場面、妻のせき上げ。


義賢最期での戸板倒し、仏倒れの場面。

劇場で涙を流し、息を呑み、悲鳴をあげた場面たち。そっと閉じて胸に抱きしめる

「ただいま」

大学生の息子が帰ってきた。

「またそれ見てんの」

「何度見ても美しさは変わらないからね」

「ご飯は?」

「食べる」

「冷蔵庫に入ってるから適当に食べて」

「今度はいつ行くの?」

「しばらく歌舞伎座には出ないんだ。何ヶ月か先」

それまでどうやって心の健康を保とうか。この子がまだ小学生だった頃、心のバランスをくずした時期があった。気力がわかなくて何も出来なかった。同じようにはなりたくない。

スマホを取り出して美術館を調べる。いい展覧会ないかな…

家族以外で心を満たすこと。心の健康にはこれが一番。



8/14/2024, 7:09:29 AM