日々家

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大好き

「大好き」と無邪気に言えたら良かった。
もうあの子の姿は朧げなのにそれだけは胸に残り続けている。幼い頃の私は、大人ぶりたかったのだ。無邪気さなど“ダサい”と背伸びをしていた。あの子の前では、かっこよくいたかったのだ。
手の代わりに繋いだリードの先にある優しさが、ふわりと蘇るたびに、私は聞こえないと知りながら「大好き」と小さく言葉を紡がずにはいられなかった。
――久しぶりに一人で歩く道は、とてもとても、静かだった。

日々家

3/18/2025, 11:44:02 AM