クラスメイトに、いつも黒いキャップを被っている男の子がいた。
彼は眩しいのが苦手で、教室の明るさでもダメらしい。
確かに、いつも俯きがちだし、誰も彼の目を見たことがないらしいし…
と、みんながみんな、ほどほどに納得しつつ、ほどほどにふしぎがっていた。
それなら色メガネとかでもいいんじゃないの?と聞いてみたけど、「上に隙間があるからよくない」と返された。
頭からすっぽりじゃないとダメなんだって。
ある放課後、夕日が差し込む教室に彼がいた。
珍しく帽子を外して、あちこち探っている。
きっと、誰かが帽子を隠すなんてイジワルをしたんだろう。
声をかけると、彼はこちらを向いた。
瞼を固く閉じたまま。
「もしかして、今までずっと目を瞑ってたの?」
「うん、帽子がないと眩しいから」
そういう彼に、運動帽を貸してあげた。
すると、彼は飛び上がらんばかりに驚いて、喜んで、その拍子に目を大きく見開いた。
ラムネ瓶みたいな色だった。
(帽子をかぶって)
1/28/2025, 2:24:37 PM