-いと-

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「お見舞いに来てくれてありがとう」
透き通った彼女の声。病人とは思えない姿にいつも驚く。彼女は癌で、手術をすれば治る可能性があるらしいが、本人は拒否している。これからも生きたい、と思えないのだという。
「ゼリー持ってきた。あと、頼まれたものも。」
そう言って、袋に入ったゼリーと、鞄に入れた毛糸と編み棒を渡す。彼女は太陽のような笑顔で、ありがとう、と言った。そんな彼女を見るのが好きだ。持ってきたものは、喜んで受け取ってくれる。そんな彼女の性格が好きだ。
「あっ、そういえば課題残ってた…。今日はもう帰る。またお見舞い来るから。じゃあ。」
「バイバイ!絶対来てよね?」

「要態が急変しました。今すぐ来てくれませんか?」
「分かりました。すぐ行きます。」
電話が来たのは翌日の早朝。癌が悪化したらしい。急いで着替え、自転車を飛ばす。病院に着く頃にはもう遅かった。彼女は眠っていた。目を覚ますのではないか、と思うくらい自然で美しい寝顔。息はしていなかった。もっと彼女と話をしたかったのに…。

※フィクション
【お題:また明日】

5/23/2024, 9:45:35 AM