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場所はエレベーター内、通称『箱』だ。
俺は今、爆弾を抱えている。
それもとびきり大きいやつだ。それゆえ破壊力も凄まじい。
こいつが猛威を振るえば、この箱内の人間はひとたまりもないだろう。

だが安心してほしい、俺は虫も殺せない程に慈悲深い人間。
嫌な汗を滝のように流しながらも、大惨事にならぬよう必死に祈っている。

ここにいる人達は平和な奴らだ。
一緒に爆弾が乗っている事も知らず、アホみたいにただ階数表示する液晶をじっと見つめてる。俺以外のすべてが。だ。

死ぬのは一人でいい。
頼むから早く爆発する前に目的の階につくか、一人残らず降りてくれ。
そう願うも叶わず、徐々に増える人間。押され潰れる俺と爆弾。
もう乗れないよ。と悲鳴を上げる箱。

その満腹の箱が動いた瞬間、よろめいた人が俺の爆弾を刺激する。
あっと思った刹那に響き渡る破裂音。それと一緒に広がる異臭。

そう、屁が出たのだ。

周りの人間は一斉にしかめっ面をした。
鼻を押さえているやつもいる。

そんな空気を読めない箱は、能天気にも目的地についたよと合図をならした。

俺はゆっくり手を上げてこうつぶやいた。

「……おります」


お題「ごめんね」

5/29/2023, 11:24:31 PM