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日の出

いつかの元日。
「綺麗だね」
貴方は初日の出を見ながら、ぽつりと呟いた。
私は日の出なんて見向きもせずに貴方を見つめていたから、『うん』とだけ返事をした。
待ち望んでいた初日の出を見た貴方はとても満足そうで、とびきりの笑顔を私に向ける。
そんな貴方は日の出よりも遥かに眩しくて、綺麗で、儚かった。

年が明けて少し経った時、貴方が突然「見に行こう」と言った初日の出。
日が昇る時刻より遥かに早く外に出て、まだ暗い寒空の下、街頭も無い田舎道を歩いた。
途中、貴方は遠くのコンビニの明かり見つけて
「あのコンビニまで競走しよう」
なんて言い出した。
私は貴方に勝てるはずもなく、着いたコンビニで貴方の好きなお菓子やら温かいココアやらを奢らされた。
競走なんてしなくても買ってあげるのに、勝ったことを全力で嬉しがる貴方が愛おしくて、そして少し羨ましかった。
二人でココアで暖をとりながら向かった先は、幼い頃よく遊んだ山の上。山の頂上には古びたベンチがあり、少し土を払って腰掛ける。
どちらからともなく、肩を寄せ、手を繋ぐ。
「昔もここで見たことあったね」
『その時も突然言い出したよね』
「そうだっけ?」
『そうだよ。あの後こっぴどく叱られたんだから』
「あははっ。あの時はごめんね」
『いいよ、昔のことだし。でも突然言い出すのは辞めてよね』
「ごめんごめん」
そう平謝りする貴方を怒ることが出来ないのは、あの時も今も変わらなかった。
変わったことと言えば、私達を形容する言葉と手の繋ぎ方ぐらいだ。

「あ、見えてきたよ」
気付けば私達の目の前には、大きな初日の出が姿を現し始めていた。
「綺麗だね」
貴方はあの日のようにそう呟く。あの時と変わらない笑顔を見せて。
私も『うん』と返事をした。ただ、愛おしい貴方を見つめたまま。

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初めまして。勝手に初日の出にしてしまいました。
設定を細かく決めた訳では無いので、二人の性格や関係を想像しながら楽しんで頂けたら幸いです。
ここまで読んで下さりありがとうございました。

1/3/2023, 2:23:55 PM