紅黒零茜

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「特別な夜」

今夜は特別な日だ。なんでも30年に1度しか見えない星が近づいてきているのだという。
その星を見ることができた者には、奇跡が訪れるのだそうだ
それを愛しの彼と一緒に見る、素敵な約束。
……きっと一生の思い出になるだろうな
それに私には彼に伝えなければならないことがある
期待と不安に胸を膨らませ、夜を待った……

けれど、その星が見えることはなかった。
突然の雨で空は鈍色に染まり、星どころか月さえ見えないほどだった
「また30年後に一緒に見ればいいさ」
なんの気も無しに彼は言うけれど、それでは間に合わない
私と彼では、生きる時間が違いすぎるから
彼には2度目があっても、私にそれが訪れることは無い
そしてそのことを、私は彼に伝えられていない

今夜、その星を見ることが出来たら覚悟を決めて伝えようと、そう思っていたのに……
……特別な夜は、私に奇跡を運んでくれることは無いんだね

1/22/2024, 5:34:37 AM