—そうして二人は、末永く幸せに暮らしましたとさ。めでたし、めでたし…。
「ああ…終わってしまった…。私の唯一の楽しみが…」
撮り溜めしていたドラマを観終わり、怜が恨めしそうに呟いた。手元のスナック菓子は空っぽだ。
あれだけ尺伸ばししておいて、結局リリィベルとオーガスタは結ばれた。一話目から分かっていたのに、結局俺まで全話観てしまった。
久方ぶりに日本へ帰ってきた怜が真っ先にしたことは、和食を浴びるように食べ(主に寿司とラーメンだ)、レコーダーに溜まっていた今期のドラマを一気に観る…だった。彼氏の俺そっちのけでだ。
精神も肉体もタフな奴ではあったものの、余程過酷な環境での奉仕活動だったようだ。その反動か、やけにジャンキーな食生活を謳歌しているようにも見えた。
「ヒロ、ピザ頼もうよ」
怜がソファでそう言いながら、無料動画配信サービスの新着一覧をスクロールする。空いた手はグミの袋をガサゴソと探っている。
これで前より太りでもしていたら咎めるものの、目に見えて痩せて帰ってきたのだから止めようが無かった。
「観るもん無いなら俺が観たいやつ観ていいか?」
「いいよー。オススメある?」
スマホでピザを注文しながら、新シーズンに突入したドラマのタイトルを言う。
「…それ多分前シーズン観てないな」
「だろうな」
「おさらいがてら前のも観ていい?」
「いや…それに付き合ってたら観終わらんて…」
既に時刻は夜の10時。長期休みの怜と違って俺は明日も仕事だ。
その言葉に怜は困ったように笑った。
「だって〜…久々のぐうたら生活最高過ぎて…終わって欲しくないんだもん!」
≪終わらせないで≫
11/29/2024, 5:53:26 AM