イブリ学校

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腐ったゴミの匂いが漂うマンホールの下、排泄物の流れる流れる通りの横道を抜けた先に彼の家はある。彼の親は彼が物心をついてすぐに、街のギャングに借金の返済ができず見せしめとして殺されてしまった。彼はそれから一人で暗い地下に身を潜め日雇いの仕事をしながら細々と暮らしていた。

絶望に満ちた生活だったが、彼には希望があった。それは街のハズレに売られている笑顔がきれいな奴隷の少女と話すことだった。彼は仕事が終わるとすぐに彼女に会いに行き、その日あった面白い話や拾った本に書いてあった物語を聞かせてあげた。彼女も彼が来て楽しい話をしてくれることを心待ちにしていた。そんな彼等だったがお互いの過去のことは名前も何も知らなかった。お互いに、過去に何かを抱えていることを身なりや状況から察して、気を使っていたからだった。それでも彼等は心の中で通じ合っているのを会話の中で感じていた。ある日彼は彼女に言った。
「僕がもっとお金を貯めて君を買うよ」
彼女は、いつもよりも嬉しそうな笑顔で
「ありがとう、待ってる」
そう答えた。

お金がいる、彼はその思いに取り憑かれたように、毎日必死に働いた。重労働でできた痣や傷が治らないうちに、働いては新しい傷を作ることを繰り返し、彼の手足は毎日血にまみれていた。そんな段々とボロボロになっていく彼を見た彼女は、泣いてしまった。そして、
「もういいよ、自分の事を第一に考えて、自分の体をもっと大切にしてあげて」そう彼に告げた。彼は「もう少しで溜まりそうなんだ、君を買ったらきっと自分を大切にする」そう約束した。

そして、彼の貯金は奴隷を買えるまで溜まった。お金が溜まったとき彼の身体は傷跡のない部分がないほどボロボロの体になってしまっていった。しかし、それでも彼は構わなかった、彼女と一緒にいられるなら。

彼がお金を持って彼女の下まで行くと、彼女は太ったギャングに引きずられながら運ばれていた。買われてしまっていた。必死にギャングに取り繕うも取り合ってもらえず彼はギャングの仲間に取り押さえられてしまった。彼は悔しかった。もし自分が金持ちっだったなら、こんなことにはならなかった、そう思った。彼女は最後取り押さえられた彼に
「私の名前はリエラ、ありがとう」
そう言って引きずられていってしまった。

過ぎた過去を思い出しながら、彼は整然とした部屋の大きな椅子に腰掛けた。目の前の机にはいくつもの怪しげな契約書が並んでいた。ノックの音がして彼は入れといった。そして太った男が部屋の中に入りいきなり「奴隷売買の件ですが…」そう言ってきた。彼は「奴隷はやめろといったはずだ」そう怒鳴った。





10/6/2023, 2:19:53 PM