【既読のつかないメッセージ】
今時は本当に素晴らしいと思う。学校を卒業して関わりがなくなったとしても、様々なアプリでつながることができるのだから。
会わなくなってもテレビやアニメなんかの話をしたり、今日見つけたガチャの話とか色々したりしていた。
11時まで話すこともザラにあった。それは過去の履歴が証明している。くだらなくて、尊くて、あっさりと忘れてしまうやりとり。そしてきっと、もう彼女とそれらをすることはないのだ。
ある日、既読がつかなくなった。
別に数週間つかないこともあったので大して気にしていなかったが、一月がたっても、半年たっても、既読がつくことは無かった。他の友人やクラスメイトからのメッセージが溜まっていく中で、彼女のアイコンが下に沈み込むのがやけに寂しかった。結局、話したいと思うのは彼女にだけだったので。
空が綺麗だと思って、それを見せようと思ってメモにしまい込む。ふと気づいたことがあって、それを言おうと思ってメモにしまい込む。そんなことを繰り返していた。
嫌われたのだろうか。なにか、悪いことをしたのだろうか。私には何も分からなかった。
画面をスワイプして一番下にある見慣れた彼女のアイコンを見る。何度見たか分からないアイコンだ。見慣れていて当然なんだけど、今まではそんなことなかった。彼女はころころとアイコンも背景も変えるので、今このアニメ見てるんだとかわかりやすい子だった。彼女のせいで何度無駄にガチャを引いたか分からない。
そのアイコンがもうずっと変わっていないのだ。嫌な可能性に、じわりと汗が滲む。
『映画、見に行った?』
今更見たところで何のメッセージだと思うような私が送った最後の言葉。その頃は丁度彼女が好きなアニメの総集編が映画になっていた。もしも行っていないのなら、一緒に行こうと誘うつもりだった。
既読は未だつかない。
もう、次の言葉は言えない。
9/20/2025, 10:42:34 AM