【赤い糸】2023/06/30
運命の赤い糸。
いつか結ばれる男女は、生まれた時から、お互いの小指と小指が運命の赤い糸で結ばれている。
何が運命だよバカバカしい。
「涼介、ちょっとなにやってんのよ!?」
朝っぱらから大きな声で、隣にいる中学来の友達、楓が前方でコケて教科書をばらまいた涼介ニムカッテ怒鳴りながら駆け寄っていく。涼介もまた楓とおなじ中学来の友達だ。2人とも親友とも言える俺の大切な友達。
2人は小学校からの仲らしいから、親友と言うより幼馴染と言った方が正しいか。
「やっべー、教科書折れたわ。」
「ったくもう!このドジ!!!」
このふたりの喧嘩はいつもの事なので、そのまま通り過ぎて教室へ向かう。
今読んでいる本では、ちょうどヒロインが主人公に恋に落ちる、女子が好きそうなシーンだった。ミステリーの中で少し珍しい恋愛込みの物語。
2人は実は昔あったことがあったのだが、色々な事件があり離れ離れ。そして大人になって再開。
まるで運命の赤い糸で結ばれていたかのように。
運命なんて誰が信じるって言うんだ。
偶然が実は決まって起きたことだって言うのかよ。
ぐちゃぐちゃと頭の中文句を言いながら外を見る。昇降口前には、涼介と、ずっと説教を垂れている楓の姿があった。
-あいつら、まだ下にいんのか?
本当にあの二人は仲が良い。あの二人こそ「喧嘩するほど仲がいい」という言葉を体現しているような2人だ。
そういえばあの二人は小学校からずっと高校まで一緒だったな。家は近いが特に家同士が仲がいい訳では無いらしい。それでも仲がいいのは、なにか因果関係があるのだろうか?
「運命の赤い糸か・・・」
運命なんて信じないが、あの二人は本当に運命という言葉じゃないと説明できないくらいに一緒にいる。
前だってコンビニで鉢合わしたこともあったしな。
「何呼んでんの?」
いきなり心臓が跳ね上がったかと思った。
ガっと横を向いたら、中学から一緒の美乃里がいた。こいつも一緒につるんでいるひとりだ。
「ああ、新しい新作だよ。運命の赤い糸なんてワードが出てきたんだよ。興ざめする。」
「あはは・・・誠也そういうの嫌いだもんね・・・」
美乃里が苦笑いをうかべる。
そういえば、美乃里と高校が同じになったのも驚いた。俺たちは特に家が近い訳でもない。かと言ってこの高校が中学から近かった訳では無いから、そう簡単に同じ中学の人と被るなんてことないはずなんだが。
まああの二人は家が近いから例外だけど。
-これが、運命ってやつか?
唐突にそんな考えが浮かんだ。いや、単にこの高校に魅力があったから被っただけだろう。きっとそうだ。
-でも、仮にもし運命だったら、悪い気はしないな。
予鈴がなり、美乃里が自分の席に戻る。その小さな背中を目で追いながら、そうだったらいいなと、自分でも珍しく運命にすがった。
6/30/2023, 12:35:54 PM