ふと、頭を一度撫でられた。
振り返ると同時に、身体が一回り大きな彼に包まれる。
「どうしたの?」
「ん、充電中」
このところ仕事が忙しかったし、恋人として支えになれるなら本望だ。労るように背中をさする。さらに抱き寄せられて少しびっくりしたけれど、愛おしさももっと増した。
普段から褒めるときや慰めるときなど、頭を撫でてもらう行為は日常茶飯事みたいなものだから、最初は全く気づかなかった。
こうやって甘えてくるときは、必ず一度だけ。
改めて意識してみると、普段と違ってちょっと遠慮がちというか、伺うような素振りがある。
(突然こんなことしてごめん、って思ってるのかもね)
真面目な上に10歳年上だから、しっかりしなくちゃという気持ちが強いのかもしれない。
全然気にしなくていいし、もっと頼ってくれてかまわないのに、と口で伝えるのは簡単だが、きっと彼は頑張ってしまうだろう。
だから、少しずつ少しずつ、自然と寄りかかれるようにしていくんだ。
(あなたは私をとても大事だって言ってくれたけど、私もなんだからね)
お題:何気ないふり
3/31/2023, 3:42:11 AM