プラージュ

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夜の山道を車で走る。
今日は遠くに住む友人の所へ久々に向かう為、車が混まない時間に移動してしまおうと家を出た。
途中で寄ったコンビニの袋に夕飯と煙草、これから長旅になるので珈琲も入っている。

馴れない夜の山道の運転で目が疲れてきたようだ。
とはいえ今日は月夜だ。
普段よりはまだ周りは見やすい方だろう。
ちょうど車が数台停められる休憩所の様な場所が見えた。
(あそこで少し休もう。せっかくの月夜だ、外のベンチに座って月でも見ながら食べようか。)
ベンチに座って食べていると1台の車が停まった。
車に乗っていたのはどうやら2人の男女のようだ。
歳は50代くらいだろうか?
盗み聞きの趣味は無いが、こうも静かな場所だと話し声も聞こえてしまう。

「和也がまたお嫁さんと喧嘩したらしいのよ。
 あの子ったら余計なことばかり言うんですか
 ら。」
「そうだなぁ、俺に似てあいつは気遣いができない
 からな。」

要約するとそんなかんじだろうか。
会話から夫婦だろうと推測した。
まぁよくある話だなと思いながら、特に気にもせず食後の一服でもするかと煙草に火を点ける。
夫婦の会話はまだ続く。

「まぁまぁそんな事は今はいいじゃないか。
 今日はせっかくの結婚記念日だぞ?
 それにこんなに良い月夜だ。
 あー…なんだ…その…今日は月が綺麗だな!」
「…あら…それって夏目漱石かしら?」
「いや!そんなのは知らん!もういい、帰るぞ!」
「冗談よ。…えぇ、本当に月が綺麗ですね。」

そして2人は車に乗り込み走り去っていった。

自分は何を見せられたのだと思うのと同時に、あの夫婦がこの先も仲良く生きていってくれたら良いなと思った。

3/7/2024, 6:42:24 PM