つらい時、決まって同じ夢を見る。
実家のリビングで、会ったことのない青年と話をするのだ。
閉めたカーテンのスキマからちらちらと光が差す以外には灯りのない部屋のソファに並んで腰かけ、私の取り止めもない話をただ聞いてもらう。青年は私より少し年下に見えるが、彼の微笑む顔はすべてを受け入れてくれるようで、娘が生まれ日に日に増す責任の重みに沈み込んでゆく生活の中で、どこにも吐き出せない弱音を彼にだけは話すことができた。彼の口から音の発するところには出会ったことがなく、話したことになにか解決策を示してくれるわけではないが、彼と話した次の日からはまたしばらくは頑張ろうと思えた。
生まれる前に父親を亡くし母と2人で生きてきた私にとって、父親らしい振る舞いというものはうまく捉えきれず、世間の求めるイクメンの残像に追われるように父親を演じてみる毎日ではあるけれど、それでも背筋を伸ばして立っていられるのは名前も知らない彼との穏やかな時間のおかげだと、照れくさいけれどいつか伝えられるといいな。
10/16/2024, 2:04:38 PM