時を告げる
時を告げる鐘の音が鳴る。
僕の祖父母の家にある時計は、童謡の大きなのっぽの古時計に出てくるような大きな時計だった。
1時間ごとにゴーン、ゴーンと昼夜構わず鳴り続けていた。
祖父母の家を思い出す時は、必ずこの音がセットになっている。
小さい頃はこの音がとても怖かった。
祖父母の家に泊まると夜中にこの音で起こされることがあったからだった。
音が怖くてトイレに行くことができないこともあった。
もうこの音を聞くことは出来ない。
津波で家ごと流されてしまったからだ。
とても幸いなことに祖父母は無事だった。
家を失った祖父母は僕の家の近くに居を構え穏やかに暮らしていた。
そして天寿を全うした。
新しい土地での慣れない暮らしは大変だったかもしれないが、それを感じさせないぐらい2人仲良く暮らしていた。
近所の人たちと新しく交流を持ち、信じられないくらい広い交友関係を作っていた。
自分には果たして同じことができるだろうかと考える。
どんな状況にもめげずに明るく生きていく、そんな二人の生き方は僕の目標だ。
祖父母を思い出す時、2人は津波で流される前の家にいる。
もちろん時計の音も一緒に頭の中で流れてくる。
昔は怖かった時計の音は今ではとても懐かしく温かい響きに感じるのだ。
9/6/2023, 10:53:12 AM