『雫』
ぱたり、ぱたりと雫が落ちる。
「……どうして」
彼女は当惑しながら僕に問いかける。
どうしてなんだろう、自分にもわからない。
だからもしかしたら、深い意味なんてなかったのかもしれない。
ぱたり、ぱたり
一定のリズムで落ちる雫。
砂時計の落ちる砂にも似ているな、と思う。
「何か答えてよ」
彼女は怒りを露わに僕に言葉を投げつける。
でも僕は何も言えない。
何を言っても言い訳にしかならない。
その言葉は余計に、彼女を怒らせる事にしかならないと知っているからだ。
「ごめん」
僕に言えるのは、ただそれだけ。
それさえも彼女には怒りの燃料にしかならないけれど。
「もう何度目だと思ってるの、小学1年の時からずっと遠足、社会科見学、運動会全部、雨!」
僕だって好きで降らせているんじゃないし、僕だって潰れたイベントは残念に思っている。
「この最凶雨男!」
彼女はそれだけ僕に怒りを投げつけると、走って行ってしまった。
ぱたりぱたり
傘から落ちる雫だけは変わらずに、まるで僕を慰めているようだった。
4/21/2024, 12:27:10 PM